◆鍵の交換を勧めたが
県警はこの日、冨永さんの死因を出血性ショックと発表した。
捜査関係者によると、伊藤容疑者は事件のあった6月29日朝、冨永さん宅に侵入。冨永さんと両親が在宅していた。冨永さんはその直前の伊藤容疑者とのトラブルの際に鍵を紛失しており、この鍵が使われた可能性があるという。伊藤容疑者は「冨永さんが出てくるのを待って刺した」との趣旨の説明をしており、県警は伊藤容疑者が冨永さん宅を出た後、犯行に及んだとみて調べている。
県警によると、冨永さんは6月22日、伊藤容疑者の車内でけんかになり、自宅の鍵の入ったリュックサックを残した。翌日県警がリュックを回収したが、鍵は見つからず、県警は冨永さんの家族に鍵の交換を勧めたという。一方、伊藤容疑者の親族には連絡がつながらず、継続して対応することにしていた。
県警は冨永さんに加害者側から身を隠す「避難」を促したが、「今は別れていないので避難はしない」という考えを示したという。
◆「仲直りした」に、注意や親への連絡のみ
これを含めて、県警には2021年10月以降、冨永さんや友人らからトラブルの通報が計4回あった。3回目となった昨年12月には、冨永さんは対応した警察官に「『別れるなら殺す』と言われた。首を絞められた」などと説明。ただ被害届は出さず、今年1月に「仲直りした。今後はトラブルがないよう関係を続けたい」と話したという。
県警は4回とも口頭注意や親族への連絡にとどめていた。一連の対応が適切だったかについて「これから調査していく」としている。
◆「恋人間のDV、深刻にとらえたか?」検証必要
DVやストーカー問題に詳しい紀藤正樹弁護士は、警察の対応について「恋人間のDVに関して深刻にとらえたか疑問がある」と話す。DVとストーカーは明確な区別が難しく、本人たちが「仲直りした」などと説明しても「警察は専門家として、最悪の事態を想定したアドバイスをする必要がある」と指摘。被害者が万一の事態に備えて身を守るための助言や、警察内での情報共有が十分だったか、検証が必要とした。
東京新聞 2023年7月1日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/260185
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